きょ

哀れなるものたちのきょのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
世界をおっぱいで股にかける。

重なった単旋律の調和。
完成されたベラを迎えた、彼女を主旋律とする美しい聖歌。いかに人間が複雑で、人格形成に幾つもの層を要するか。
まさに赤子が初めて歩いたような、そんな感覚。

野生的本能を内に秘めたベラを追うカメラ。
不自然に躍動的で、飛び回るハエのように彼女の冒険を捕らえる。
時に単焦で、時に広くシュールな視点を魅せてくれた。

危なかしい無垢で純粋な一人歩きを、エマストーンはよく演じ切っていた。
好奇心に突き動かされ、目に見えたものを追う彼女はエネルギッシュかつ刺激的で、豊富な語彙と深い洞察力を持つ正に子供らしい姿。
性的欲求に素直で、ただ気持ちよさに取り憑かれる様子も、一切の縛りを持たない自由な生物としてあるべき姿のような気がした。

スクリーンに映る世界は、壮麗なアートそのもの。独創的に色づいた景色が、どれだけ魅力的で冒険心を誘うものかよく表現できていた。
立体的な絵画のようなセット、衣装。
全てが極上の映画体験をもたらしてくれた。

深い愛情を持ったベラは、世界の濁流に飲まれてもピュアな視点を失わなかった。
自分は、そこに美しさを見た。
壁に飾ったような倫理観を持つ自分とは違う、そう感じた。
しかしまあ、自分は単純なので、明かりがついた劇場は妙にカラフルに、美しく見えたのもまた事実。
きょ

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