百瀬

哀れなるものたちの百瀬のネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

凄まじかった。刺激的で芸術的で奇抜。
まず、作品を通して人間の欲望の変遷が見える。
脳の移植によって身体は大人だけど脳は子供の女性が、どんどん成長するにつれて何を欲するか、どういう思考に進むか、その変化が見える。
最初は知識も無いまま狂ったように性欲に耽って獣のよう。しかし成長するにつれて知識欲が芽生え、どんどん「自分」という形を持った思考が生まれていく。
印象的だったのは、最初出会った頃はあんなにダンカンが大人に見えていたのに、いつの間にか逆転してベラの方が大人っぽく落ち着いて見えた事。性欲しか持っていなかったベラを通して見ると大人に見えた、ただそれだけの事だったと気づいた。あの主導権が逆転する瞬間は何故か高揚した。
エマ・ストーンの怪演も書かずにはいられない。あの役は彼女にしか無理だったと言いたくなるくらい、凄まじかった。最初の何も理解出来ていないままの笑顔と、思考の果てに溢れる笑顔の演じ分けなど、ベラにどんどん知識、思考が詰まっていく様を演じているのが印象的だった。
そして視覚的なものもすごく良かった。ベラの世界が広がったようにモノクロから色のついた世界へと変わる瞬間は、観ているこちら側も世界が広がったように感じた。そしていちいち映し出されるものが芸術そのもの。情報量の多い画面が多いが、芸術として不必要と感じる描写が無い。最初からエンディングの最後まで全て芸術。街並みも、着ている服も。
そこに独特の不協和音がBGMとして合わさることで、この作品独特のファンタジーが広がっている。

観てよかった。素直にそう思う。
本当に魅せられた。
百瀬

百瀬