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哀れなるものたちのganaiのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
「女王陛下のお気に入り」でも思ったのだけどヨルゴス・ランティモス監督はキューブリックを尊敬しているのだろう。

結構多くの人が指摘していたけどタイトルロゴのフォントが「博士の異常な愛情」のパブロ・フェロがデザインしたものとよく似ているし、偏執的な性欲を抱く中年男性が無垢な女性を各地に連れ回すという前半の筋立ては「ロリータ」を思い出した。

キューブリック作品が男性性の愚かさを通して束縛される女性を描いていたのに対して、本作は直接的に女性の賢さ(うまく表現する語句が出てこなかった)と自由を通して男性=「哀れなるものたち」を描いている。

原作は未読だが予告を見ただけで本作がメアリ・シェリーの「フランケンシュタイン」を下敷きにしているのはすぐ分かるのだけど、自殺した女性の体とその胎児の脳からベラを作り出す科学者ゴドウィン"God"バクスター博士が良い。

親から虐待を受けて育った博士はベラを娘として愛し、最初は過保護なまでに外の世界との接触を避けるのだけど彼女を見そめた弁護士ダンカンとの駆け落ちについては彼女の自由意思に任せ帰宅費用の餞別まで渡す。元から怖い顔のウィレム・デフォーがさらに傷だらけのメイクで好演している。

大人の女性の外見に幼女の頭脳を与えられたエマ・ストーンが余計な常識にとらわれず徐々に知性を身に付けていく演技も素晴らしかった。

劇中詳しくは語られないけど蒸気機関で発展した別世界の18世紀ヨーロッパの美術や衣装も楽しい。
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