ヤマト

哀れなるものたちのヤマトのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【 生きて知る悦び 】
 “知る”という行為は、“自由”と並んで、人間らしく生きるために必要不可欠な要素である。この作品を観ればそう思わざるを得ない。
 某大人気アニメのコピーのパロディとなるが、「見た目は大人、頭脳は子ども」に尽きる作品であった(ただし内容は極めて過激)。
 自分の赤ちゃんの脳を移植されたベラは、自由なようで監禁された生活を送っていた。自分のしたいことはできず、外界の刺激をシャットアウトされる様はまさにモノクロの人生であった。
 一方で、“見た目はお城”の監獄から飛び出し、あらゆる意味で世界を知ってゆくベラは、人としての幸せを味わいはじめる。その開放感たるや、観ているこちらにまで伝わってきて、思わずウキウキしてしまう。世界はカラフルなのだ。
 メルヘンチックなキャラクターや画風が印象的であり、流れくる音楽も絶妙にマッチしていた。芸術的な作品だった。
 エマ・ストーン。ひとつの作品の中で、あれほど振れ幅が大きいキャラクターを演じ切った彼女は間違いなく、アカデミー主演女優賞にふさわしい。
 ラストシーンにおいて、傍若無人の元夫が、山羊の脳をプログラムされて映し出されたとき、無意識のうちに「哀れだなぁ」と思ってしまった。そうかこれは『哀れなるものたち』であり、欲望や思考を有する人類皆、結局そこに行き着くのではないか(もちろん人を山羊にする行為も含む)。ふと、そんなことを考えさせられた。
 確かに世界は、怖いことや残虐な光景がたくさんある。しかしベラの言葉を借りるなら、でもやっぱり、世界って楽しいんじゃないのかな。
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