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哀れなるものたちのmitoのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
2024年6本目。
ヨルゴス・ランティモス監督最新作。

医者のゴドウィンにより、崖から身を投げた母の胎から取り出され、脳を母に移植された胎児…はベラと名付けられ、ゴドウィンと暮らしていたが…。

やがて外の世界への渇望に駆られ、ゴドウィンの元を去るベラが成長していく様描く作品。
相変わらず、この作風でハリウッドでしっかりと評価されるのが凄い、と思いつつ。
大人は身体ながら思考は赤ちゃんのエマ・ストーン演じるベラ。
最初は単語だけを発したり、アヒルの鳴き声を真似たり。正に赤さん。
それが数分後、しゃべる言葉が増え、ラストには哲学混じりの皮肉まで操る大人の女性に成長する。
昨今のトレンドである、弾性による女性への抑圧をモロに描いている、しかも大分露骨な割には刺々しさを感じなかったのは不思議。
短い時間で幼い子供の成長を観察する何とも不思議な時間が展開し、しかもそれが常にエマ・ストーンの姿をしたいるのだから物凄い違和感(良い意味で)

彼女の演技によるアルジャーノン的なアウアウアーからの成長っぷりの説得力はすざまじいものがあり、完全に場を掌握していた。
本作では、「女王陛下のお気に入り」で強引に脱いだような事は無く、話の中でしだかりと脱ぐ場面が用意されていた(笑)
しかも脱ぐことが、かなり重要なファクターになってる。
無垢な心で快楽を貪り完全にセッ◯スモンスターと化したベラ、猿があれを覚えると延々繰り返す、という逸話同様、社会性を学ぶ機会をすっ飛ばした成熟した大人なら起こり得る事象は笑いの要素もあったが、ストーリーの核としてしっかりと機能していた(お陰でマーク・ラファロのヘッポコ感も出てたし)

ベラの成長から独り立ちまでの、可笑しな冒険譚は何処か多幸感に満ちていて、何故か観終わった後に異常な満足感を得られる。

やっぱり、ヨルゴス・ランティモスの映画は好きだなぁ…と実感した作品だった。
とまあ、全体通してヘッポコな空気感の映画だった中、一番ランティモスぽかったのはラストのある登場人物に対する処遇かも知れん。不意打ち過ぎて噴き出したわ。

あ、あとダンスシーンか(笑)
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