女性版フランケンシュタインの怪物
近世イギリスでマッドサイエンティストの科学者が死体を使って、人間を作り出すお話。基本の骨格はフランケンシュタインなのだが、その怪物が絶世の美女という設定。
この時に用いたのが、絶世の美女の肉体とそのお腹で死産になった赤ちゃんの脳みそ。この二つを使用し、死体を生き返らせてしまうという物語。(小説のフランケンシュタインとの類似点はかなり意図的なニュアンスで、あの小説を書いたのが18歳の少女だったことは留意点)
まるで「アルジャーノンに花束を」のような、無垢で無知なるものが、知識と経験を手に入れ成長していく物語。
本作の注意事項は、作中の性描写が結構キツいこと。R18指定になるのも納得の性描写が多々ある。主演女優のエマ・ストーンは本当に美人なので、余計に体当たりな演技に驚かされる。ある意味、賞レース的な目線でも注目。
奇妙な世界観でこそあるが、人間の成長を描く様は割と王道。その展開のお話の中で、意味のあるフェミニズム描写もありちゃんと飲み込みやすいのもポイント。
特に女性の性の解放という側面で見ると、なかなかユニークな仕上がりになっている。
ただ相手役となる「ダンカン」は物語内ではイケメンとして出てくるのだが、ハルクでお馴染みのマーク・ラファロでは流石に厳しい。彼はもう56歳なので20年若ければイケメン俳優として見えたけど、流石にオッサン過ぎる。
キャラクターとしてはなかなか嫌な奴ではあるのだが、終始主人公に振り回されているというプレイボーイなので、ちょっと可哀想ではあるものの楽しんで没落っぷりを味わえる。
映像面はアート系の非常に凝った絵作りが印象的。劇中での不可思議な背景の描き込み、船の上で見えるおどろおどろしい空の色や、近代アートのような船のデザイン。
バベルの塔を思わせるアムステルダムの描写。一枚絵として表現されるカットの連続は美術館で散歩しているようだ。
ブラックユーモア溢れた幻想的で耽美な世界観は、非常に残酷でもあり、同時に非常に美しくもある。
美女の裸に抵抗がないのなら、ぜひ劇場へ。