藍紺

哀れなるものたちの藍紺のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.1
身体は成熟した大人の女性だが、胎児の脳を移植され赤ん坊のようなベラ。無垢なまま教育を受けていない彼女が旅の中で様々な経験を積み成長していく冒険譚。

面白かった!原作があるとはいえよくこんな物語を思いつくな。ヨルゴス・ランティモス監督のメッセージ性は感じつつ、ブラックコメディとしても非常に興味深いものだった。

欲求の赴くままに本能むき出しだった女性が、頭と身体を使って思考し性を謳歌し教養を身につけ、急速に目覚めていく様は爽快感さえある。
ベラに対して、男たちは庇護という名の束縛をし、女たちは知恵や生きる術を授ける。まあ男女の役割が極端すぎるとも思うが、分かりやすく表現したかったのかな。女性の自立とともに、親子関係のあり方の描き方もとても良かった。ベラの物語であり、ゴッドウィンの物語でもあると感じた。

なんと言ってもベラを演じたエマ・ストーンがとても魅力的。彼女なくして作品は成立しなかっただろう。肌の露出が多いシーンも多々あったが、そこはかとなく品性が漂い、清々しさもさえ感じる。そして何よりパワフル!!強い!!!何事にも能動的で他者に自分をコントロールさせない強さは感動すら覚える。

作品の世界観や色彩のコントラスト、衣装に至るまで視覚的にも楽しめて絵画を観ているようなルックも素敵。唯一無二としか言いようがない作品だった。



※衛生観念などはこの時代にないのか分からんが、性感染症とか妊娠のリスクとかは若干気にはなったかな……。現代が舞台ではないからしょうがないですかね。
藍紺

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