マクガフィン

哀れなるものたちのマクガフィンのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.4
女性の自立や解放をモチーフにした発展・自己形成的な寓話。演出はぶっ飛んでるが美術や衣装は綺麗でプロットの大筋は意外とまともに。

創造主(と観測者)に縛られた被造物が外界で社会形成をするが、純真無垢なネオテニーは社会の影響をダイレクトに受ける。娼婦になったことや、娼婦や貧困がある社会は、現代社会におけるメタファーでもあり、〈所詮こんな世の中だから〉的な反映は考え深い。
旅をして人と触れたり本を読んだりして人間的に成長するが、成熟した女性より、純真無垢な女の方が愛されることが鋭く的を得ているように。

狂気と正気、子と大人、娼婦と聖女の対比。出したり・入れれたり・出し入れする描写のリフレインと、モチーフもリフレインする構層の妙。魚眼・広角レンズ・フレームインフレーム・一点透視図法を使った外側視点の構図。それらは興味深いが、作品に決して奇麗に嵌っているわけでない気もするし、変調のBGM同様に世界観とマッチしているようにも感じるし、咀嚼はできなかった。

ミックスした動物が普通にいること、美術のペ○ス窓がキューブリックのオブジェを連想したことなど、ディティールの作りこみは感心するのだが。