May

哀れなるものたちのMayのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

俳優、衣装、美術、脚本といった作品を構成する一つ一つがとても強烈なのにそれぞれが絶妙なバランスのもとに爆発している。
独特なカメラワークによる画づくりの徹底さには唸ってしまって、全く飽きない。特にランティモスの作品ではよく多用されていた魚眼レンズによる世界の歪みがここまで効いてくる舞台設定もない印象だった。

身籠った我が子の脳を移植された女性ベラ。本作はそんな二重構造を抱えた彼女の至って純粋な成長過程を描いている。
性衝動への探究から始まったベラの冒険は、場所や人間を通してそれを取り巻く貧富、搾取、経済といった社会についてを経験する(そういったメカニズムを凝縮させたそれぞれの舞台設定も見事)。その経験した物事に対する応答の純度が次第に失われていく流れがとても鮮やかだった。特に貧困層の現状を目撃したベラの悲しみは胸に迫り来るものがある。
そしてある程度の成長を遂げたベラがたどり着くのは、母親の記憶。ここで出会う元夫はこの世界のメカニズムの頂点に君臨するような存在であるのが痛烈で、そんな彼がヤギになってしまうラストは皮肉的だ。

まさにいろんな要素が成功している傑作だが、なんといっても主演のエマ・ストーンの快演は、映画史に刻まれるだろう凄まじさで私は強烈に感動した。
May

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