Thorta

哀れなるものたちのThortaのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
天才外科医の手によって蘇ったベラ
ベラよ、世界を見よ!そして、見て学べ!

 ヨルゴス・ランティモス監督×エマ・ストーン主演、アカデミー賞を総ナメするだろう1人の女性の成長譚の傑作。
 何と言っても映画のルック、美術と衣装が可愛くて美しい。レトロな雰囲気とファンタジーが共存する世界が好きな人は絶対観たほうが良い。魚眼レンズを使った撮影や独特な音楽すらも心地よく感じる、完全にこの世界のファンとなった。

 再び世界に生まれ落ちたベラにとって社会の仕組みや構造はなく、その外側へ外側へと欲求のみに従って行動してく彼女の姿は魅力的だ。フェミニズムを超えて、人という生物がどのように世界を見て吸収していくのかを表現した映画であり、単に女性という箱から見た景色でしかない。しかし、『フランケンシュタイン』や『ピノキオ』のように作られた人間から世界を描くジャンルに女性という新たな視点を混ぜているのは面白い。

 そんな主人公ベラを演じたエマ・ストーンの演技は素晴らしく、ウィレム・デフォーやマーク・ラファロなど彼女を取り巻く男性陣も魅力的だ。シンプルな象徴として登場するが、ベラとの交流を通し、徐々にその人間性をある意味取り戻していく展開にもグッと来た。

 アート系のジャンルではあるが、プロットは絵本のようにシンプルで、エログロ要素も必要な表現としてまとまっている。ヨルゴス・ランティモス監督作は本作が初だが、彼の映画の中では1番エンタメ性ある作品ではないかと予想する。
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