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哀れなるものたちのartemisのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
エブエブみたいな、カオス状況に盛大な音楽を合わせることで妙によくできた映画感を演出できている。あながち間違ってはいない、謎な部分やモヤモヤを一切残さない秀作だった

我が子の脳を移植されるとんでもストーリー。知能指数が低いと怠惰の極み(3大欲求が抑えられない)に走ってしまうのは境界知能を持つ人間や知的障害のある人間を想起した。もちろんそのようなハンデを負った人について非難するのではなく(彼女の精神年齢の低さは設定的にしょうがないものだったため)、その弱みに漬け込む悪い人間のことをより哀れに見せている。駆け落ちを企んだ人間は彼女の知能の劣りに漬け込み、彼女の元夫は彼女の持つ女性性の弱さ、従属性に漬け込んだ。酷く愚か、まさに哀れなるもの。

彼女は自分の力で学び、経験を重ね、聡明な人間として成熟した。元々正しいことをしようと努める正義感が強い女性なのだろう。(彼女の子の思考がそうなら彼女もそうだと仮定)お金稼ぎのため娼婦として働いているときでさえ環境をより良くしようと意見した。普通絶望していく状況なのにも関わらず、自ら切り拓こうとする様が本当にすごいと思った。

そして映像がとにかく印象的。常に空がおかしいほど綺麗で幻想的。やりすぎだけど面白い。また主人公の衣装、ヘアスタイルはクリムゾン・ピークを彷彿とさせる。長期滞在したパリは街並みも建物も美しい。パリだけではなくこの映画に出てくる建物、小物、衣装、画角や光の当たり方など、全て凝っている感じがする。エンドロールの形式は静止画のような映像をメインに申し訳程度に携わった人間の名前が額縁のように添えられていた。その謙虚さも素晴らしいが、そこに映し出される映像が特によかった。鮮やかな壁?についたよく分からないシミとかでさえ綺麗だった。新しいエンドロールの表現、後半で静かな雰囲気になるのも好き

最後のシーンが1番カオスで面白かった。成人男性がメエメエ鳴いて、その人間に脳を移植された女性が水を持ってきてあげようとする。序盤は本気で大丈夫かこの人と心配した主人公は成長して優雅にジンを飲んでるいるし、感慨深い^_^心の中で大爆笑

エマ・ストーンはよくこの役を引き受けましたね
映画館ほぼおじさんしかいなかったのがまた哀れな感じを引き立てたよね^^;男を信じることが出来ない結構フェミニズム感も感じた映画。


p.s.
サウンドトラックを聴いたらやはりエブエブに少し似てるカオスさ、壮大さがあった。特筆するならばエブエブよりも不協和音、気持ち悪さ、滑稽さが際立っていた気がする。Londonとエンドクレジットが特に好き。
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