瓶

哀れなるものたちの瓶のネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

うおーーーー、なに?
ひとりの人間が人生を獲得していく話じゃん 好きすぎる
胎児の脳を移植して生き返らせるという狂った行為、とても許されるわけではないものだけど、ベラがこの旅を肯定していたのは少なくともよかったんでは 反出生主義ではこうした出生への同意の有無がいわれるわけで、出生というクソデカイベントに際して同意の有無は大事なことだと思う反面、ベラのように生きてみないと、外の世界に出てみないと結局なんとも言えなくない?って感じ

ラスト、あれでよかったんだと思うけど、すごい怖かった 進歩させるの意味、合ってるんだろうけど 心の中に一抹の不安があり、ドキッとしてしまった
ベラは自分の出自を聞いて、動物と同じような実験をされたことに対して、ゴッドたちを「モンスターどもが」と言った 非人道的な行為であるとベラが感じたから しかし、いくら暴力的な将軍とはいえ彼も人間であるのに対して、ベラはゴッドたちと同じように動物と同じような実験を施し、あたかもハッピーエンドであるように見せた いやハッピーエンドではあるんだよ ベラたち権力を持たない者が権力を持つ者に勝つという意味では!けれど、「モンスターども」と同じ行為をしたベラを手放しに賞賛してもいいのかなと思ってしまう
そして、もしかしたら自分がそっち側にいつ降ろされてもおかしくないとも思う いつも被害者であるように、権力に屈服せずあがこうとする視点で物語を見てしまうけど、「同意のない脳交換」をされるのは別に映画の中の悪役だけじゃなくて、私にも差し迫る可能性はいつだってあると思う 私がこの物語を女性の解放ではなく、あらゆる人間への可能性であると見たから

マーサばあちゃんが好き ダンカンが怒って本を海へ捨てたけど、何事もなかったかのように2冊目をベラにあげるばあちゃんよすぎ この人の達観?というか生きてきた積み重ねが余裕として現れるのすごい

ベラは目の前のことにいつも全力で、世界を知ることを冒険と呼ぶ 彼女を理性のない、精神の病んだ人と呼ぶ人がいるが、生き方としてはごくまっとうで理知的であるように思われる 学びをやめない姿勢 立場の弱い者は学ぶことさえも阻まれるんだな……と思った でも、マジで学び/冒険って大切じゃないですか?未知のものに触れそれへのリスペクトが生まれることで、悲劇を防げるような気がしているので

ビジュアルがとっても美しくて、2時間半観ていてずっと楽しかった!特に、ベラがリスボンの街を巡るシーン あそこで白黒から色がつくけど、奥行きがすごい広がったし綺麗だし、街の風景が見えるところでひとりでゲロ吐いちゃうとことかよかった 自分が自由な人間のひとりであることにワア!って思っちゃったのかな 写真集とかほしい パンフもっといろんな素敵写真載せてーー!
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