たとえ創作でも誰かが傷つくのを観たくなくて映画鑑賞から遠ざかってたけど
そんなわたしのメラメラする情念を取り除いてくれるような作品だった。
ヨルゴスランティモス監督の作品では『聖なる鹿殺し』がとにかく好きでしかたないんだけど『女王陛下のお気に入り』が公開当時ストンと落ちてこなかった。
それでも現役の中でいちばん信頼していて尊敬している監督だから、とにかくずっとずっと新作を楽しみに待ってた。
あまり高くない期待値とともに。
そしたらもう、途轍もなくぶっ刺さり、涙が止まらなくて、避けてきた恐怖心が
すっかり取り払われた気分。
とにかく観終えてすぐのいま思うことは
拘束しようとする忌まわしい記憶から解放され
奪われていた尊いものを取り返し
また新しく不条理とたたかうための方法を手に入れたような感覚。
まずはこの興奮を思いのままに残しておきたい。
ベラの自由な心に倣って。