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哀れなるものたちのICHIのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
2.8
マッドサイエンティスト的な大学教授が、自殺した女性に彼女が妊っていた胎児の脳に入れ替え蘇生させ彼女を家の中に閉じ込め生活している、という設定はとても魅力的でそのストーリー展開に大きな期待を寄せて観たのだけど、物語が全く書けていなくて途中から退屈な時間が空しく流れた。凝った映像とか赤裸々な映像とか奇妙な音楽とか,もちろんそういうのが悪いわけじゃないが、物語がしっかりしていないと2時間半は到底持たない。屋敷に閉じ込められてヘレンケラーのように暴れていた彼女が屑みたいな男と駆け落ちして汚辱にまみれながら世界を経験するのだけど、教授とのドラマがそのことで希薄になってしまい、かと言って、パリで娼婦をしながら生きる彼女の姿も「下品さ勝負」的な感じで面白くなって行かない。アルジャーノンみたいに知性が発達しているようなので、彼女の世界に対する視点の変化がもっと明確に出れば面白くなっただろうけど、歩き方も含めて彼女は変わらず同じような行動を繰り返すだけで、そしてラストにいきなり元の夫が出て来て絵に描いたような悪人であるその夫との物語になり,ラストもそこに持って行く展開にしてるけど,彼女の脳はすでに昔の彼女じゃないんだからそこがドラマになるわけもなく、アカデミー賞に対する信用はもとからないけど,これで作品賞とか脚本賞とかとったら橋から身を投げたくなっちゃいそうです。
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