Taji

哀れなるものたちのTajiのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.8

ヨルゴス・ランティモス×エマ・ストーンの再タッグは“解放”と“人生選択”の物語だった。

同名小説が原作。
ヨルゴス・ランティモスの「女王陛下のお気に入り」を製作中だった2017年ごろから本作の企画が動き出したそう。

世界観、衣装、メイクアップの作り込みが本当にすごい。音楽も監督作らしく、ヘンテコだけどクセになる。
アカデミー賞で大量ノミネートも頷けるし、恐らく受賞を席巻するのは本作だろう。

自殺した女性(エマ・ストーン)の頭蓋に胎児の脳みそが移植される。
ベラと名付けられたその女性は閉じ込められていた家を出て、旅に出る…というおおまかなプロット。

R18指定なだけに、性描写に躊躇がない。
だけどそれも性的に消費されるためのアイコンではなく、どこか可笑しいしベラの変化でその様子も少しずつ変わる。
主演のエマ・ストーンは本作でプロデューサーも務めている点はここで強調したい。
性的なシーンを撮影する際に、演者や監督との間に入って全員の同意を得ながら尊厳を保った撮影を進める役割のインティマシーコーディネーターもしっかりと携わり、その上でエマ・ストーン自身が選び取った表現だ。

個人的には、なぜあそこまで性描写にこだわるのかと中盤以降訪れる娼館でのベラの選択がまだ理解できていないのでゆっくり考えてみたい。

“女性”を自身の所有物にしたくてたまらない男と、冒険という他者との触発から人生を選択していくベラの構図がとても良かったしラストも気持ちがいい。

とにかくヘンテコさが強い映画だが、ヨルゴス・ランティモスの映画で一番好きだったかもしれない。

エマ・ストーンに主演女優賞を!

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