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哀れなるものたちのsinginggizmoのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.8
タイトルどおり、哀れなるものたち(POOR THINGS)の映画だったなー。
この世に生きるものすべてが哀れなるものという皮肉でもあり、諦めでもあり、肯定でもある気がした。

勝手に胎児の脳を移植され生き返ったベラ(エマ・ストーン)という女性の生き様と、彼女を支配しようとしてくる男達と、彼らからいかに解放されて自由になるかという物語。
しかし、ベラという人はどんな疑問にも素直に真正面に向かっていくのが気持ちいい。
エマ・ストーンのグラマラスすぎない体型や、フェミニンすぎない猫目の顔の造形がベラというキャラクターにぴったりだった。
とにかくベラはセックスしまくりなんだが、彼女からはエロスというより、もっと純粋な性欲を感じた。

男性からみたベラの魅力がよくわからなかった。みんなすぐ魅了されてたけど。
美しい大人の女性の見た目と、幼児性が残る純粋さのギャップ?
だとしたら、それは現実世界だとだいぶ気持ち悪いのだが…。
それも人間の愚かさの一部として描いてるのかしら。

一見、物語に目新しさはないかなーと思ったんだけど、支配構造が幾重にも連なっていて、解放されたと思った先にまた支配があり…いろんな支配の形があることに気づくとおもしろかった。
噛みしめれば噛みしめるほど味が出るタイプ。

ロンドン、リスボン、アレクサンドリア、パリと実在の場所を舞台にしてはいるが、過去のような未来のような時代に囚われない美しくも不気味な世界観を見事に作り上げている。
その世界観のおかげで、リアルだったらかなりグロテスクで共感が難しい展開も、すんなりと観ていける。

クズな元旦那のラスト、笑ってしまったけど、いやヤギに罪はないし、ヤギが可哀想だろってモヤってしまった(笑)
けど正直まともな人はいない世界だし、この世のみーんな矛盾に満ち溢れた哀れなるものたちなんだって解釈してみたら、妙に腑に落ちた。
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