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哀れなるものたちのtakaeのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.9
天才外科医の手により死の淵から蘇り、新たな生を受けたベラの、世界を知るための冒険の旅ー

大切な人やものを、自分の手の及ぶ世界に閉じ込め、縛りたくなるのが人間というものなのだろうか。

見るもの全て、経験したこと全てをまるでスポンジのように吸収し、狭い世界を飛び出し自分自身の目で世界を見てみたいという思いに突き動かされ旅に出るベラ。

社会のルールや倫理観、こうあるべきであるという全てを飛び越え、自分の欲求に正直に、貪欲に学び、感じ、自身を解放しながら次々と自らの殻を破り成長していく。

一方で、ベラの周囲にいる人々はそんなベラをまるで籠の中の鳥のように扱い、広い世界を見せてあげると言いつつ自分の用意した箱庭のような世界の中だけで楽しむことを強要し、彼女を縛ろうとする。

そんな彼らの姿は本当に哀れで情けなくて、思わず笑ってしまうほど滑稽なのだけど、彼らの中に私は自分自身の姿を見てしまった。

人との関係性が変わっていくのが怖くて、これまでの関係を変えたくなくて、そこにしがみついて相手を縛ろうとする自分。
もうとにかくそんな自分が哀れすぎて情けなくて、泣けてくるほど。

そしてそれと同時に、何かに縛られ変化を恐れる哀れな自分にも、ベラと同じように新しい世界に惹かれ、そこに飛び込み、今までにしたことのない体験をしてその感情に浸りたい。自分の欲求に正直にやりたいことをやり、自由に生きていきたいと強く願う自分も確かにいて。

人を人たらしめるのは何なのかとか、誰だって狭い箱庭みたいな世界を飛び出し、自分で考え、自分で選び、世界を変えていくことができる、常にアップデートすることができる。そうすることで幸せになれると、もしかしたらそう感じる人も多いかもしれないし、実際にそうだとも思う。

だけど私はあのラストシーンを見て、自分の欲求に正直に自由に生きていくということは、これまでの世界や自分と関わってきた人達とサヨナラすることでもあると、もしかしたら周囲を傷つけることになるかもしれないと、それを知った上で自分を解放していく覚悟はありますか?と問われているような気がしてならなかった。

そして、それでも自分に正直に生きていきたいと思ってしまう自分に泣けて泣けて仕方なかった。

何なのこれ。私おかしいのかな?

ベラの周りの男たち、そしてベラ、どちらにも感情移入しまくって、勝手に諸々突きつけられた気がして泣くという(笑)

エマ・ストーンの凄さ(としか言いようがない)や、みんなも言っているようにまるで美術館を巡っているような美しさ、エロやグロ、剥き出しの生と性...そういうものに圧倒されつつ、結局は自分自身の内面を巡る旅に出たような気分。

めずらしく観た後すぐにノートに書きなぐった感想なので、読み返したらおかしなことばかり書いているなと頭を抱えたくなったけど、これが私の感じた全て。
だからそのまま載せようと思います。
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