Koshii

哀れなるものたちのKoshiiのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.8
ジーザス!!!

これはベラが知識を求める冒険譚。

なんだこれ。
俺、これ10時間くらい観てたい。

以下、ネタバレを含みます。













解放と再生を、現実主義と進歩で迎え撃つ。そのための冒険、ファンタジー。

倫理ははるかに崩壊し、自己とは何か必死に問うストーリー。哲学的なテーマを常に内包し、結構ミニシアターっぽい雰囲気。エマストーンの怪演は、ベラとしてこの世界で、この中で生きていた。

あるがままの人間として、一歩ずつ成長していくベラ。根源的で衝動的。しかしそれは、外の世界からの刺激を受信しているからではなく、同時にベラの世界を発信しているから。
水中で吐き出した酸素がその瞬間に、水と入れ替わるように。

好奇心はどこに由来するのか。訪れる旅先毎に、それは移り変わっていく。チャプター単位が、一つの成長期と言っていい。

性欲、食欲、知識欲、それは、他者を知りたいと云う欲望に始まり、自己を知りたいという欲望に繋がっていく。
世界を知る事とは、詰まるところ、それを写し鏡として自己を知っていく事である。

それゆえベラは、知らない自分を知るために、めくるめく世界に飛び込むのである。

ラストの、将軍に対してヤギの脳を移植するシーン。死ではなく生を与える。この行為をどう捉えるか。

真実に辿り着くことが必ずしも幸せではないし、必ずしも不幸ではない。

ともかく、ここから彼女の冒険は始まるのだ。
Koshii

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