ヤスマサ

哀れなるものたちのヤスマサのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)によって、胎児の脳を移植され新たに命を得たベラ・バクスター(エマ・ストーン)の成長と冒険を描いたSFファンタジー。
ベラは、大人の体でありながら、純粋無垢な視点で世の中を見て成長していく。

近代でありながら未来感もある世界は、どこか時間軸が異なっているようで、夢か現実か分からなくなる。
独特な世界観は、どこかテリー・ギリアム監督感も感じられるかも。
空や街、船や建物に至るまで、映像はどこも美しく魅力的だ。

幼く保護下にあったベラは、ある意味、束縛された環境にある訳だが、その間はモノクロの映像で表現されている。
束縛が解かれるとカラーになるのだが、開放され自由を得てベラの世界は色づいたのだ。
ベラの成長は早い。
脳が肉体に早く追いつこうとしているのかも知れない。
訪れる都市は、ベラの成長の象徴だ。
放蕩者の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)と最初に訪れたのはポルトガルのリスボン。
大航海時代の幕開けとなった都市で、ベラの成長という冒険が始まる。
道すがらの経験で、精神的にも成長するベラが次に訪れたのはエジプトのアレクサンドリア。
世界中の知を集めた学術都市だ。
知識を得て、自分なりの価値観を身につけたベラは、愛欲の街パリへと向かう。
不条理を知ったベラは、体を売ることで自立し、向上心を獲得する。
…といった具合。
この旅で多くのことを貪欲に吸収していくベラは、生きづらい世の中を駆逐していく。
哀れなるものとは誰のことであろう?
偏見に満ちた社会であり、柔軟性を失った人たちではないだろうか。
そんなベラを、体を張った演技で表現するエマ・ストーンに脱帽せずに観れない映画。
ヤスマサ

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