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哀れなるものたちのmahのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
圧倒的な世界観で描かれた美しくもどこかおどろおどろしい“おとなの絵本”
ヨルゴス・ランティモスの新たな傑作、そしてベラという映画史に残るヒロインの誕生を目の当たりにした

胎児の脳を母体に移植して蘇った主人公ベラが、社会の良識という理不尽なルールをぶち破りまくるという痛快SFラブコメディ(なんじゃそりゃ)。
本作の原題は『poor things』。見た目は大人、頭脳は子供のベラに対してpoorだと投げかけ、父性や性欲そして社会性で縛り付け所有しようとする男性たち。果たして本当にpoorなのは…

ヨルゴス・ランティモスと言えば理不尽ルール。『籠の中の乙女』の犬歯が抜けないと家から出られないルール、『ロブスター』の結婚絶対主義と恋愛禁止ルール、『聖なる鹿殺し』の4段階の呪いルール。
これまで様々な理不尽で登場人物を苦しめてきた訳だが、今作では序盤からそのルールをどんどん破っていく。ある意味ランティモスらしくない作品だ。
そしてさらに過去作に共通するのは“淡白な色と演技“。

そんなランティモス作品が、美しい!綺麗!デザインが素晴らしい!と賞賛され、更にはエマ・ストーンを初めとする俳優陣の演技も評価されるのはなんだか不思議だ。
『女王陛下のお気に入り』でエマ・ストーンと出会い、今作では共に制作をしたからこそランティモスの良さが生かされつつ映画として昇華されたのだろう。

松本人志にとっての浜田雅功。常田大希にとっての井口理。天才を天才だと大衆に理解させるためには良き理解者が隣に必要だ。
ヨルゴス・ランティモスにとってのエマ・ストーンがそんな存在だったのだろう。
既に次作は撮影済みでさらに次の作品についても話してるようなので今後が楽しみだ。


MCUファンとしてはグウェンとグリーンゴブリンとハルクが並んでるだけでも眼福。マルチバース最高。
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