さかしー

哀れなるものたちのさかしーのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
胎児の脳を移植され蘇生した女性が好奇心のままに世界を冒険しながら真の自由を手に入れる物語。
自分の奔放さを棚に上げ女性を支配しようとする有害な男らしさをはっきりと描きつつ物怖じすることなく自分で選び学び提案し賢く成長していくベラ(エマ・ストーン)に大拍手。

たどたどしく不器用に歩いていたベラが閉ざされた白黒の世界を飛び出しあらゆる出会いから学び知性を武器にみるみる自己を確立しては自分の意思で選び堂々と歩いていく人生はとてもパワフルで、ここまで強烈に生々しく解放の物語を描けるヨルゴス・ランティモス監督は本当にモンスターだよ…。(褒め言葉)

不気味なのにじわじわ心地よくなってくる音楽もカメラワークもラストシーンにも最高に痺れた。
正直露骨すぎて絵面的にきっっついシーンもあったけどあのラストのためにもう一回観たいまである。酸味の中に甘みを感じたかと思いきや苦味しか残らないようなランティモス作品のあの味が私は大好きなので…



見た目こそ最初から成人女性のままだけど歩き方や喋り方から成長の過程を見事に演じていたエマ・ストーン。
「女王陛下のお気に入り」の演技も大好きだったけど、無邪気かつ芯のある賢い女を演じるのが上手すぎる…本人自身がそうだからだろうけど本当に素晴らしかった

主要のキャラでいうとウィレム・デフォーがめちゃくちゃ良かったなぁ…
狂気と愛情が混在した名演技。ウィレム・デフォーが演じてきた人物の中で一番すきまである。心がないけど愛はあるモンスターが似合いすぎる…。

ベラがみるみると賢く成長するにつれて周りの男たちの幼稚さがどんどん際立つ構図もわかりやすく滑稽で、マーク・ラファロの器の小さい男っぷりもおもしろかった。
自分の思い通りにならないと暴言を吐いたり悪態をついたりむせび泣くという一周まわって愛おしいまであるダメ男が似合いすぎててわらってしまった 撮影中は楽しい現場だったそうで安心した いい人なんだろうな…

そして船のシーンが大好きすぎる。ベラと夫人との出会いはこの世界に生きる女性の連帯であり救いであり、人生においてああいう学びの機会をくれる人物と出会えることって幸せなことだと思う
「女性を下に見ているくせにいざ自分よりも賢い女性に出会うとうじうじと悪態をつくみっともない男」もまたリアルで…すごいよかったなぁあそこのマーク・ラファロ…いるよねああいう男…


哀れなるものたち、世界を知ることでアイデンティティを確立する物語としてはたしかに「バービー」に通ずるけど個人的には「Swallow/スワロウ」を思い出した。自分の体は自分のもの。
そして最後まで観たあと私の脳にまっさきに浮かんだのはバーズオブプレイの『心理学では復讐で心は晴れないって。でもやるわよ♡』のあの画像でした

最後の最後でいきなりランティモスみが増したとおもったら原作はまた違ったラストらしいのでいつか読んでみたいな… でもわたしはこの映画のラストも最高にすきです。クソ野郎にされてきたことを自らの手で倍返ししてきっちりケリをつける映画がだいすきなので…。



・最後に注意喚起として
それとR-18なのでそれなりに覚悟はしてたけど露骨も露骨すぎる男女の性交シーンが何度もあるのが個人的には正直きっっっっっつかったです。なので苦手な人はご注意を。
ベラが自ら望んで選んだ道だしストーリー上必要なシーンだとはわかっててもきつかった…  まじであのシーンのあの役に選ばれたおじさんたちは何者なんだ…ほんとうに気持ちが悪かったです………(役として褒めてます)


・どうでもいいけど気になったところ
ベラが性の快楽に目覚めるシーンでおもわず(りんご…!?初手でりんご…!!?)てびっくりしたんだけど知識を得てしまったアダムとイブ的な意味でのりんごだったんだろうか… りんごはやめときなさいなベラ…(謎の保護者視点)
さかしー

さかしー