いかがわしい見世物としての映画が、画面いっぱいに溢れていて、スクリーンに映し出される物事を眺めているだけで、何とも楽しく愉快な気持ちになれる映画でした。
ロンドンが舞台とは言っているけれど、いつの時代かも判然とせず、とても現実の世界とは思えません。奇怪な屋敷には鳥の頭をした犬がうろつき、顔中傷だらけの老科学者は食事中にシャボン玉のようなものを口から吐く。
子どもの知能を持つベラの言動は、であるが故に滑稽で大いに笑わせてくれます。
魚眼レンズで撮影されたロングショットなどのカメラワークを始め、プロダクションデザイン、衣装、音楽に至るまで、奇想天外な物語に相応しい遊び心と前衛感覚に満ちています。
「映画は作り物」という基本に意識的で、渾身の創作をあらゆる瞬間で見せつけてくれる、近年稀に見る満足感の高い作品だと思います。