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哀れなるものたちのCAMPDALTのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「世間知らずの女が男の誘いで外の世界を知り、やがて自立したあとはその男を捨てて新しい道を行く」というクラシックな物語を、バッドテイストで包んでパッケージングした映画。

筋立てとしては谷崎『痴人の愛』と同じといえば同じ。
本作は(「世間知らず」でいる理由の設定を筆頭に)フィクションの振り幅がものすごく大きいが、ナオミを上書きするような新しい人物像としてベラを描けていたとは思わない。

「あり得たかもしれないが実際には存在しなかった過去」を懐古しているような奇妙にレトロな方向でまとめられている美術は、服も建物も船も街も、面白かったけど居心地は悪かった。

音楽もそう。全編通して奇妙な楽曲を奇妙に使っていた。
あんなに音がさみしいエンドロールは初めてだったかもしれない。

ベラがアレキサンドリアのスラム街を船から見て貧困に絶望するくだり、あれはあまりにもインスタントだったなあ。
新しい知識を燃料にしてどんどん覚醒していく最高に面白い流れだっただけにあれはもったいなかった。
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