射手座キネマ

哀れなるものたちの射手座キネマのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
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『マルコヴィッチの穴』に似た話のような気がした。モノクロの所は1950年代頃の東欧の映画っぽい。
ヴィクトリア朝らしい時代で抑圧されて生きて来た女性が自らが身籠った新生児の脳と入れ替えられる事で新しい人生を生きる。序盤の常識と暴力のアンバランスぶりにはハラハラした。
やたらと性描写が多いのだけれど、興奮する気がしない。愛とか快楽というより、生理的な営みとしての描写に近い。それより、女性が自分で本を読んで得た才覚から何をすべきかを実践する術のように思えた。その時代に顧みられ無かった衛生学(ラベンダーの精油は抗菌性が高い)と精神医学の知識を風俗業でいかに活かすかには感心した。
ただし、点数を何と付けていいのかよく分からない映画だったとは思う。好きとも嫌いとも言い切れないが語りたくなる。そんな常識にチャレンジしてくるような大人の映画。