Jun潤

哀れなるものたちのJun潤のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
2024.01.29

エマ・ストーン×マーク・ラファロ×ウィレム・デフォー
第96回アカデミー賞にて作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞にノミネート。

主人公は、妊娠中に自ら命を絶ったところで、科学者のバクスターの手で死んだ体に胎児の脳を移植されて生き返ったベラ。
舞台はモノクロのバクスター邸。
学会に睨まれるバクスターに憧れたマックスは彼の助手として、ベラの日々を記録していくことになる。
日々様々なことを学習していくベラは、“愛”と“欲”について知るべく、マックスと婚姻を結ぶことに。
しかし、婚姻届の作成を担当したダンカンによって、ベラは冒険の旅に出る。
いずれ帰ってくることを確信していたバクスターらによってベラは送り出される。
性欲や人間、社会、そして女性としての生き方を学ぶ彼女の旅路は、仮想の世界でも普遍的な社会のあり方に色彩を与えていくー。

いやまずはこれエマ・ストーン大勝利じゃないですかね!
もちろんマーク・ラファロの、ベラに翻弄されっぷりも最高でしたし、ウィレム・デフォーの、狂気と父性が共存し、顔の特殊メイクの有無は関係ないだろうと思わせるほどの表情の作り込みも素晴らしかったです。
あと今作の設定が、モノクロ場面から始まったこともあり、こんな医学もあったんじゃないかという仮想世紀末的なものかと思いましたが、色がつき、ベラが冒険を始めるにつれて明らかになるパラレル世界観。
過去、現代、未来にありそうな街並みや船、建物などもありながら、社会の状況や処女信仰、職業選択など、現実と変わらないものを時にリアルに、時に壮大に描いていて、SFともファンタジーともとれる世界観に引き込まれました。

少しだけあった既視感は、最近観たばかりの『悪い子バビー』と『ラ・メゾン 小説家と娼婦』だったかなと。
外界を知らない、それだけでなく体は成人女性で脳は生まれたばかりの胎児のもので、バクスター邸内が世界の全てで、どんどん一人の人間として色んなことを知っていき、自身の人生で世界に存在しようとする様や、娼館に訪れる色んな男たちの相手をしながら、職場改善だったり、あくまで明確な目的のために体を売り続ける様など、既視感だけに終始せずにより強調された描写を感じることができました。

ベラの冒険を描くオデッセイ・シュール・コメディでありながら、終盤の展開はシリアス・サスペンスになっているなど、結構盛りだくさんなストーリーで、尺的にも2時間超えのボリューミーなものでしたが、長尺でも飽きさせない、尺以上の映画体験だったと思います。
Jun潤

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