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哀れなるものたちのCのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.6
美術が良い、音楽も良い、コメディとして笑える部分もしっかりあって、ダンスシーンや川辺を歩くシーンなど目を惹く画もばっちりある。これだけで、観る価値は十二分にあるけど、個人的にはだいぶ苦手な部類の映画。

子供の純粋さに大人の醜さ、哀しさをぶつけて、成長を描く映画って沢山あるけどありきたりだし、そそられない。それよりも、そういった当然の障壁を経た後の大人達がふと純粋さを出したり、達観してみたりしながら、他者とどう関係していくかの方が興味あるし、表現が難しいからこその腕の見せどころがある。この映画を経て、「大人」になったベラのこれからの歩みの方が気になる。
奇抜に見える「身体は大人、頭脳は子供」設定も、ベラに対してただダイレクトに性•暴力•知識をぶつけるため、そしてその時の感情を雄弁に語らせるためだけにそうしたようにしか感じられない。この設定によって、視覚的に面白かったり、エモーショナルなシーンは確かにあって、「手段」としては成功してる。けど、それによって伝えようとした「目的」、上記した「子の成長」的なことは、良くいえば普遍的、悪くいえば陳腐。

途中に出てくるキャラクターや場面設定から人類史を感じたり、我々はimprove(改善)できるっていうメッセージから人間賛歌として受け取ったり、色々批評性は高そう。
ただ、無垢な存在に性•暴力を含んだ教育をもたらすっていうヨルゴス•ランティモスの趣味(もはや作風になってるけど)を考えると、スタートはそこで、後々付け足して膨らんでったんじゃないの?って疑っちゃう。スケールを大きくした過去作『籠の中の乙女』じゃねって観ながら思った。
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