はやく高等遊民になりたい

哀れなるものたちのはやく高等遊民になりたいのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.4
かつて創造主は創造物に怒って楽園を追放したのではなくて、可愛い子には旅をさせろ精神で見送ったのかもしれない。つまり人類は罪じゃなくて愛を背負ってる。

子供は限られた行動範囲の中でしか世界を知れず、どこにでも行けるほど大人になる頃には無垢な好奇心も冒険心も無くなっている。それなら、子供の純粋な心に大人の自由な体を持ったベラの体験はどうなるだろうか。

世界の喜びを知り、やがて残酷さも知っていく。
恍惚的な自我だけの世界から他者に気がつき、自分を知り、社会の中の自己を知る。
ヒトの20年ほどの成長の中で人間とは、生きるとは、世界とは何かを一つずつ手を差し伸べるように描いてくれる。
人は心が成長するから人なのであって、それができないならヤギにでもなった方が良いのかもしれない。

血縁に定義されない家族の繋がり、縛り付けない無い婚約、情けないドンファンなど名詞の型を破る人間関係も面白く、ゴッドの楽しい家は万引き家族を思い出した。

衣装も美術も世界観もダンスも、目に見える全てが素晴らしく、鑑賞者もベラと同じように驚く2時間の体験。