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哀れなるものたちのISHIPのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

R18映画で、内容もセックスシーンが多いとも聞いていたし、自分の住んでる地区じゃギリギリにチケット買っても大丈夫だろくらいに思っていたら、割と入っててビックリ。この監督の注目度の高さなのかな。
あと、エマ・ストーンって名前聞いたことあるけどみたことある映画あるかなと思ったらラ・ラ・ランドとか出てる人じゃん、まじ全然別人じゃねえか!!と驚き。役者の凄さを改めて知る。ウィレム・デフォーもかもしれないけど、メイクとか演出の凄みも大きいですよね。演出はほんとにものすごくて、実際の地名は出てくるものの、全く別の世界に感じる演出に惹き込まれてしまった。チープな言葉を使うと全編に通じるオシャレな質感。
さて、この映画ってどんな内容だったんだろうと色々と考えては見るのだが。セックス第一だったベラが知性を身につけることによってそこから離れていく様は、人間の成長って学び、知識によるものが大きいってことなのかなあ。そしてそこから浮かび上がるのは、その対比としての男性の存在。彼ら…というか主にダンカンと元旦那とかだけど、彼らは成熟した大人で知性もあるはずなのに性欲や支配欲、また金持ちになりたいなどの権力を持ったものでいたいという欲望ばかりが先に立っている。逆にゴッドは去勢しているからなのか、その欲は見せないけれど、研究に没頭するあまり常軌を逸しているように思える。というかその彼の知的好奇心がベラを生み出してしまったわけなんだけど…でも結果それは罪とは言えないよな。ベラという存在の否定は違う。マックスと他の男との違いはなんだろうと考えると、やっぱり愛情なのかなあ。でもマックスも最初はベラに欲情したのがきっかけのようにも思うんだけど、そこからの感情の変化?感情表現?の差なのかなあ。
その、知性を得る、ということについて。本を読んだり、他者との触れ合いによる成長、もあるのだけど、あの閉鎖的な家から飛び出したこと、旅をしたことで得た経験。そもそも、セックス第一って言ったんだけど、マスターベーションをし始めた時はまだ世界は白黒なのに、セックスしたことによって世界に色がつく。その快感を知ったんだよね。しかも、こんなこと言うと酷いんだけど、マックスじゃなく、ダンカンとの快楽主義なセックスなのが重要だったようにも思う。その後、音楽に合わせて踊る喜び。喜びだけではなく、悲しみ。世界には貧困により死んでしまう子がいることを知った時、彼女は身を投げようとした。脳は違うものの、大きな悲しみに出会ってしまった時身を投げてしまった身体を持つベラ、ってところも。また、お金は湧いてくるものじゃなく自分で働かないと得られないものであると知ること。文字通り彼女は汗水流す娼婦となる。世界の残酷さと、ベラがあの時に出来る仕事ってアレしかない…というのは暴論かもしれないけれど、そんな気もしてしまって。そこでセックスの意味合いも変わったり、男性の、性に対する姿勢っていうか多くの男性を知った…とかもあるのかな。娼婦であることを咎めたり嘆いたりするのはダンカンだけなのだよな。お前のような男が買うから成り立ってんだぞ…?みたいなね。
身体は大人、頭は子供、という設定から見ることで、世界のおかしさに突っ込んでいる構造。この辺のことは僕自身が気づいた訳じゃなく、ポッドキャストを聞いて得た受け売りなのだけど。そんな話を聞いて、よく分からなかった部分の解像度が上がりました。脳をすげ替えること、女性が性に対してオープンになったりセックスを生業にしたりすること。一度元旦那の元へ戻りながらもマックスと一緒になること。様々なタブーとされることを肯定しているような映画だったのかもしれないと気づく。世の中の意味わからない風習は変えていける。魔女狩りなんてファックオフ。
あと劇伴最高。エンドロールカッコよすぎ。やけに性的なものを感じる。直接的な表現でないのに。
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