Ran

哀れなるものたちのRanのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

前半の白黒、カラーがなくてもこんなにも鮮やかに奇妙な雰囲気を表現できるのか、と映画の美しさに感嘆した。
中盤から出てくるカラーの映像、完全にファンタジーの世界。可愛いでしかない。

美術がどんぴしゃに好き!
馬車を模して馬の頭部の剥製を付けた車が良かった。

音楽も、適度な不協和音で作品を邪魔することなく溶け込み、雰囲気の演出に絶大な効果を及ぼしている。

衣装も可愛い。フリフリの袖が最高。

そしてとにかく役者がみんなはまり役。
エマ・ストーン、彼女だからこそ可哀想なヒロイン、ではなく自分の道は自分で決める、快楽を求めるのも彼女自身の選択であり男達の奴隷ではない、というフェミニズム的な主張をしっかりと観客に伝えてくれている。

脳よりも先に体が発達していると情事を羞恥として認識するよりも快楽として認識する方が先になるのだと考えると彼女の行動はむしろ自然のことなのだろう。
無一文になってしまうダンカンには少し同情してしまうが、その後の彼の転落ぶりが面白かった。

母親が自殺を選んだ理由を探るべくアルフィーの元に帰るが、最終的にベラは母親ではなく子供、脳の持ち主としての選択をした。これは身体よりも脳に優位性があるという事なのだろうか。いずれにしろ赤ん坊とも別の存在であるのは確かであるのだが。

ラストシーンに対し、見終わった後に結局世の中は歪んでいるんだな、とふと思った。

クレジットも好き。
何かのドアップ、美しい造形の連続。文字も長方形の外枠に並べられ、フォントも映画の雰囲気に合っている。


ところで、余談であるのだが、良い作品を映画館で鑑賞したいという気持ちと1人で誰にも邪魔されずに鑑賞したい気持ちのジレンマに陥る。
本作品は個人的にドハマリの作品だったので映画館で鑑賞できて良かったのだが、終始お喋りというか、自身のリアクションを言葉として発してしまう方と一緒になってしまった。嫌な気持ちになるのは勿体無いと思い、ある意味面白い体験として受け止めようと思いつつも好きな作品であったのもあって余計興醒めしてしまったのも事実。
「監禁されてる!」「博士生きてた!」等、ナレーションなく映像で語られるものを音声によって壊された気分だ。
映画鑑賞のマナーとして何処までが許されるべき範囲なのか疑問に思った鑑賞体験だった。
Ran

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