DaisukeYoshino

哀れなるものたちのDaisukeYoshinoのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
現代版フランケンシュタインの怪物。なんと人生の示唆に満ちた映画か。。。良識ある社会に隷属することへの抵抗、生(性、聖、清)なる「ベラ」の喜びと苦しみ!

他者の自由意志(身体)を支配すること=Poor Things(≒宗教)であり、作中に出てくる男性はすべからくベラに従属を求める。進化(変化)することのできない男性性が築き上げた矛盾だらけの現代、ならびに社会的弱者への寛容性を失った世界へ向けた痛烈なアンチテーゼをこんなにもファンタジックにアイロニカルに描くことができるのか。スパイスとしてのシュールレアリスティックな表現の匙加減もまた絶妙。

若さ純粋さ美しさへの憧憬と嫉妬。無垢なベラの経験は、ああ、自分(42)にはもうこんな感動は訪れないだろうなと思わせるくらい、美しく鮮烈な描写であった。

未知なるものの美しさを色彩で描いたのも、わかりやすくいい表現だった。モノクロだったベラの世界は、未知なる旅と経験で眩い色彩を帯び、既知となった世界の色彩は褪せていく。思えばベラの衣装もまた彼女の理知を現し、エキセントリックで不可思議であった装身具も物語後半では鳴りを潜めていく。

社会と自分の関係。もっと良くなる(する)には、無知であることを恥じず知ること、間違いを認めること。考えることをやめないこと、自身の価値観を築くこと。それを信じ「行動(実験、経験)」すること。ベラの姿勢は、イマこの世界、私達への戒めとなるような映画であった。慈愛ある社会はもっと良くなれる。(ベラのエデンのように、性別も種族すら超越できるのかもしれない。)

しかしまー衣装も美術も音楽もPsychoでござんした!目が眩むような色彩の世界、鮮烈で繊細な衣装、鑑賞者の感性を共鳴共振させる不協和音!章頭の幻想的映像、シュバンクマイエルよろしくなキメラ達もちょー良かったし、ウィレムデフォーはいつだってPsycho!視覚も聴覚もうれしい2時間半でござった!映画芸術たるや!







と、真面目に書いてみたけど、エンドクレジットの「確信珍(満) ©︎みうらじゅん」がこの映画の言いたいところなんだろな。ふざけてるよなー、じつにクール。性描写否定論なんてどこ吹く風。かませよ!ってことじゃんね。