慢性眼精疲労でおます

哀れなるものたちの慢性眼精疲労でおますのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.4
大半はエマストーンがfurious jumping!する話。

甲板でマーサからゲーテを薦められるまでもなく、割と最初のほうから、昔々に読んだファウストみたいな構成だなと思って観てた。自殺を思い止まった老人ファウストが悪魔メフィストフェレスの誘いに乗って若返り、彼の案内でいろんな時空を旅する話だ。

ベラが若返るのは頭の中身なので、見た目だけが若くなるファウストとは違うーーようでいて、実のところ若い脳に支配される体は「成長せよ」という命令を受けて活発に新陳代謝するので、見た目もいくらか若返るはずーー事実、骨格はそれ以上の成長を見せなかったけど髪の毛は毎日ぐんぐん伸びていた。

しかし、記憶が空っぽな点はファウストと決定的に違う。そのおかげでベラは余計なしがらみに囚われることなく、成人なりに発達した五感からたっぷりと情報を吸収して、内面も急速な成長を遂げる。そしてファウストよりもずっと割り切った、人間離れした合理性を備えていく。

ある方向性で理想化された女性像を示しつつ、その裏返しでこういう男性がいいっしょという都合のいい男性像を押し付けられた感が拭えないので気に留めておく。