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哀れなるものたちの更のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
この物語は、ある女性が外の世界を知りたいという好奇心を抱くところから始まります。幼くて未熟、純粋で残酷な彼女は、自我を持ち、性の目覚めを経験し、保護者への反抗心を露にし、自由を得たいと望むようになります。
そして、実際に彼女は外の世界に解き放たれます。他者の存在、己の感情、相手の心理、自分の欲望に自覚的になりながら、知識や社会性を身に付けていきます。思考し、判断し、決断するひとりの人間として「正しいこと」を求め、良い人間になろうとします。
成熟した彼女は、当然、自分の出自にも疑問を持つようになります。元の場所に帰って来た彼女は、とてつもない現実を突きつけられます。それは愛する保護者による決して「正しくない」行いが生んだものでした。しかし、その不条理な現実は別の不条理から生まれたものでもありました。
外の世界を冒険して得た知識や精神、経験は、彼女がその不条理な境遇を乗り越える糧となりました。不条理なものを受け入れる、他者を許すというのは、生きることそのもののように難しいです。でもそれが生きることなのだと教えてくれる作品です。
(それでもやっぱりムカつくやつはヤギにするしかないのかな…)
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