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哀れなるものたちのふくやまのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.8
映像と音楽のおかげて飽きずにみることができた。パリ、アテネ、リスボン、など様々な都市を巡るのも良かった。(舞台が現地ではなくスタジオなのも良い。)


⚪︎人造人間とフェミニズム映画
映画が始まりすぐ頭に浮かんだのはメアリーシェリー『フランケンシュタイン』。どちらも博士が科学の発展や好奇心から実験的に人を造る。奇しくも今作ではウィレムデフォー演じるゴドウィンがフランケンシュタインの怪物のような見た目をしている。
この映画がフェミニズム的であると言われる理由の最も大きなもののひとつが、造られた人間が女性であったことだと思う。他にも人造人間の作品は『シザーハンズ』があるが彼は男だった。今作はベラが女性であるが故に、男性による所有欲が何度も描かれる。マークラファロに、「本を読むとあの愛らしい喋り方が〜」と言われていたシーンは印象的。そういえば、エヴァの綾波レイも女性の人造人間(正確には人造人間ではないがだいたいそんな感じだと思う)だった。


⚪︎身体と心の関係
はるか昔から身体と心の関係は議論されていたが、この映画では心は脳に宿っており身体とは異なる存在であるという立場だった。身体を機械のように捉えており、心は脳に宿っていて身体を自由に操縦できるといった形だろう。

⚪︎タイトル
哀れなるものたち(poor things)というタイトルだが、神の視点から、登場人物全員に対して哀れだなあと言っているような気がした。ベラも含めて皆倫理的に外れているし、誰ひとりとしてまともな人がいない。だからこそこの映画はそれを俯瞰して愚かな人間たちが生きている姿を描いているような気がした。

⚪︎その他
・ダンカンとベラのダンスシーンがまじで良すぎる。エマストーンは内面を全て外に解き放つかのように自由に踊り、ダンカンはそれをコントロールするためにまた違うタイプのダンスをする。この2人のスタイルも心情も違うからこそ生まれる踊りのぶつかり合い、せめぎ合いがとても見応えある。
・アクセントがすごい。ずっとアメリカ英語を学校で習ってきたり見聞きしてきた自分からしたらなかなか独特なアクセントである。アメリカ英語を話す役者たちはめちゃくちゃ練習したらしい。
・ゴドウィンバクスターの家の造形が良かった。特に好きなのは食卓のテーブルは西洋絵画に出てきそうなのに、天井についているのは殺伐とした蛍光灯なのが面白かった。
・なんの意味があるのかわからない、馬の頭がついた電動馬車も良かった。
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