KIYOKO

哀れなるものたちのKIYOKOのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5
エッジの効いたブラックユーモアに、役者の演技力も合間って飽きずに見れたし、色々うまさも感じる作品だった。

良し悪しではなく、バービーよりもこっちの方が正統なフェミニズム映画だった。

資本主義、社会主義、共産主義、ミソジニーなど、さまざまな社会システムが端的に表現されているパートがあったり、思想や性壁など、綺麗事じゃ語られない部分の「多様性」が描かれていて興味深く見れた。

胎児の脳を移植された無知の成人女性(=ベラ)いう物語の出発点の設定の仕方が良い。
見てるこちら側もフラットな視点になれるので、やり方によっては突拍子もないものになりそうな映画だけど、ベラの「冒険」を追体験して、共感もできる。

封建的な男性たちによる抑圧から自ら冒険の道を選び、セックスや酒など享楽的な快楽から、世界の広さを知り、知識を学習し、精神的、社会的に自立した女性へと成長していくことを「穢れ」として処理して隠したりするわけでなく、そういうことがあって今の自分があるという、ある種の「強さ」へ昇華していく部分に気持ちよさを感じた。

踏み込みずらい部分にどんどん飛び込んでいくベラも見ていて気持ちよかった。


自分は男なので、どちらかというとウィリアム・デフォー演じるゴッドに共感しながら見れた。

たしかに一見ゴッドに下心がありそうに見える関係だけども、ベラを観察する研究の奥に純粋な「父性」があるのも、映画として良い奥行きを感じる。

その複雑な感情を表現できるウィリアム・デフォーの演技力にもはや脱帽。
グリーンゴブリンといい、記憶に残る芝居をいつも見せてくれる。

オープニングからエンディングまで、映画のテーマに沿った良い演出だった。

程の良い多様性でなく、世界の広さを感じさせてくれる今見るべき映画だった。
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