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哀れなるものたちのichicoのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.8

脳移植の話だとは予め知っていたので、ヒトの一生を、大人の体でリスタートした場合の思考実験なんだろうな…と思って見に行ったのですが、
肉体と脳のどちらが主体なのかとか、そういう部分に重心が傾くことはなく、中心にあるのはおそらくからだの権利の話だった、と思います。

1992年の原作なので、おそらく「性の自己決定権」あたりが議論され始めた頃、女性が性表現すること自体が新鮮であった頃の小説なのかなと想像しています。
マドンナの「エロティカ」が1992年だし…?

ただ、原作では著書が医師の手記を発見した視点で描かれているそうなのですが、
映画はそうではなく(そこだけがポイントではないと思うけれども)倫理的に抵抗を感じる場面も少なくなかった。
例えば脳が幼児である場合、肉体がおとなだとはいえそれは「幼児」として守られるべきではないかなど…。
そのあたり、一度原作も読んで考えてみたいなと思っています。

映画全体としては、音楽も美術も素晴らしく見応えがあり、なんでか「モモ」を初めて読んだ時のこと思い出したりしました。
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