Rita

哀れなるものたちのRitaのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.9
好奇心の旅で見た絶望と解放。

天才外科医によって胎児の脳を移植されたベラは、不幸な死から蘇る。世界を自分の目で見たいという欲望に駆られたベラは、放蕩者の弁護士に誘われて大陸横断の旅に出る。偏見から放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。

アラスター・グレイ原作の小説。素敵な街並み、絵画のような空模様、カラフルな可愛い衣装。作品が絵本のような世界感で惹き込まれます。

リスボンで素敵な歌と街並みにうっとり。初めてのエッグタルトに感動したり、ダンカンと"熱烈ジャンプ"の快楽に溺れ、お酒を飲んで酔っ払ったりと新しい経験に目がまわるほどの喜びを得る。

食事では音楽に刺激され、ベラが無邪気にダンスを楽しむシーンが好きです。知識の吸収が早く急成長を遂げるベラ。どちらかといえば感情的だった彼女が論理的に物事を考えるようになった過程には短いながらも多くの経験があった。

フェミニズム、社会主義、知識欲を刺激する旅。歓びだけではない暴力や貧困層、富豪層が蔓延る世界を知る、この世は不公平だと。誰からの支配のない世界を望み前向きに生きるベラを見ていると心が軽くなる。

マーク・ラファロ演じるダンカン・ウェダバーンがベラと過ごすことで遊びだった彼女への気持ちが本気になってしまい自分の手から離れて行くベラに対して、嫉妬心と増悪に蝕まれ勝手に苦しみ崩壊していく姿が面白い。ベラが船で出会った貴婦人のおば様と若い青年のペアが笑いのユーモアがあって大好き。

「哀れなるものたち」は「フランケンシュタイン」と共通していながらも真反対な物語で、博士がベラに愛情を注ぎ、父親の様に接していることが分かる。愛されたことで他者にも愛を分け与えようと考える柔軟な思考をもつ女性に育つ。ベラの成長とその過程に非常に欠かせない家族愛の物語でもある。
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