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哀れなるものたちのjeffk4planのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
【◯】
・今作を観ることでしか体験できない世界観
名探偵は「見た目は子供、頭脳は大人」ですが、今作は逆です。故に序盤ではベラの言動・行動はとても稚拙なものですが、それが徐々に歩みを遂げていきます。
序盤のシーンがほとんどモノクロなのも、まだベラが"色"を知らず、世界を見るに足る知識を持ち得ていない示唆になっております。
長時間放送することを強みにしているチャリティ番組を見た時に、独特な嫌悪感を感じた記憶があるのですが、それに近いものを感じました。
ただし今作におけるそれは、ピエロを見ている時に近い感覚で、気になってもっと見てみたいという煽りに繋がります。
色々な事に挑戦して、失敗して、苦労して、己で手に入れた知識と経験を元に強く生きていくベラの様は、R18で視聴制限するのはあまりにももったいない勇敢さがあります。

・音楽がすごい
序盤のシーンで特に音楽が大活躍しています。モノクロであることと、少ない効果音でできた脳の余裕に今作を構成する嫌悪感、狂気、不気味、サイコ、といった世界観をねじ込んできます。サブスクにあるサントラを聞くだけでも十分世界観に浸れます。

・ポリコレスクラップ&ビルド
序盤のベラは端的に言えば知的障害の状態で、それを世界観の構成に利用しています。かと思えば、中盤から終盤にかけては、ポリコレを遵守したような流れ。
ポリコレを遵守した作品や、ポリコレに歯向かっていく作品はよくありますが、1作品の中で両方を行う作品はなかなか無いと思います。

【×】
・視聴に対してある程度の理解力が必要
セクシャルなシーンかと思いきや、強い啓発が隠れていたり、セリフとそのシーンが伝えたいメッセージが同じでない事があります。そういった意図を汲み取る力がないとただのアバズレアヘアヘポルノに成り下がってしまいます。

【まとめ】
R18になると、ここまで表現のタガが外れるだと知れました。故に今のエンタメが如何に不要な枷をつけられているのかを知る良いきっかけになりました。
人に勧めるには少し勇気が要りますが、多くの方に見ていただきたい作品です。
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