おなかすいた

哀れなるものたちのおなかすいたのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
観た直後は正直、そんなに好きじゃないなと思ったけど、見終わった後に色々と思い返すと細部までこだわって丁寧に作られていると感じた。

映像が奇抜で美しかった。あくまでフィクションですよ〜って訴えかけてくる感じさえあった。

ベラの仕草や動きが段々と自然になっていく様子がすごかった。知的な大人になってるじゃん! 

美しい女性の身体に新生児の脳を移植するって狂気じみた実験で、彼女自身がその悍ましさに気づく様子も描いているのが肝な気がする。ベラが自分以外の被験者の姿を見た時に、「こんな恐ろしいことはやめて」とはっきりとゴッドに言う姿を見て「めちゃくちゃ人間らしいな」と思った。

映画の序盤で「人間と動物のちがい」みたいな話が出てきたと思うんだけど、ベラの変化を見ていくと「理性的であるか」が人間らしさを感じる要素だと示されている。

「良識ある社会」とは即ち、「理性的な社会」だ。性的欲求は抱きながらも、それを公にしない。ベラは無邪気さや好奇心で欲求を加速していくし、それを「良識ある」大人たちが利用したり(同時に利用されることでもあるけど)、守ろうとしたり、と態度が異なるのも面白かった。