ランティモス監督作品には意味不明な所に面白味を感じている部分があるのですが、
今作はランティモス作品では解りやすい部類に入るのではないでしょうか。
解りやすいからといって面白く無いわけではありませんし、自身の胎児の脳を移植された女性の成長譚でありますので、相変わらずぶっ飛んだ設定ではあります。
しかし、今作の原作は監督オリジナルではありませんので、『聖なる〜』『ロブスター』『籠の中〜』の方が悪趣味で好みでした。
同監督『女王陛下のお気に入り』から引き続き監督と手を組む主演はエマ・ストーン。
幼稚な子供から知的な女性まで、その演技は序盤から我々を釘付けにします。
彼女主演の『クルエラ』の様な個性的な衣装にも注目。
魚眼レンズで撮った様な不思議な雰囲気作りや、外の世界では幻想的な背景が加わり美術館の様な風景。
上を向けば気球やロープウェイが行き交う文明があるのに、下を向けば飢餓に苦しむ人々が…
美しくも悍ましい世界がそこにもあります。
序盤は主人公エマの性的な欲望を赤裸々に描いていましたが、本編が進むにつれて欲望から文学や哲学への学びへと広がっていきます。
人は日々学び成長してる。
そして「女性とはこういうものだ」という固定観念の破壊
思い描いてた女性像が崩壊していく男は哀れでしたね。
奇妙な世界感にこれらの事を落とし込んだ今作はお見事です。
哀れなるものたちとは誰だ。
ランティモス監督のマイルド化はこのまま進むのだろうか。
