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哀れなるものたちのkiiikoのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
1回目 2月4日
2回目 2月12日(ドルビーアトモスにて)

面白かった〜、という言葉が正しいのかわからないけど、見ごたえがあって2回見てしまった。衣装、音楽、色調、すごく好みだったな。男ってやっぱり愚かだなあ、とずっと思わされてしまった。そして、女の賢さは、男にとって都合が悪いのだ、都合が悪いのならばやっぱり全女性が手に入れて武器にしていく必要があるのだ。(自分は恵まれている、とヒシヒシと感じた。)地味にあの家政婦的女性も、手術の助手をしていたぐらいだから、かなり知性のある設定なんだろうな。

ただやっぱり私が女であるからより思うのだけど、計画外の妊娠の恐れ(恐れという言葉を使うのも適切ではないけど)を無視して、無知の状態からセックス三昧になることのファンタジーさについてはいただけないな…と思ってしまった。女性だって、男性が抱く『脱童貞後の世界』と似たように、性的な奔放さによって自分自身の殻が破れるのではないか、という期待や幻想を抱く瞬間はあると思う。その反転として、成人後ずっと処女であることに過剰に恥ずかしさを抱いてしまう人もいるし。ただ、その思想に比べて、具体的に行動に出る人が男性に比べて少ないのはやっぱり『妊娠』という大きな壁があるからなんじゃないだろうか。妊娠して、さらに出産にまで至った場合、女性の人生は大きく変わる。(本来、父親である男性の人生も同等に大きく変わるべきなのだけど、何故かそう捉えていない男性への憤りはおいておく。)今回はベラは、特殊な移植をされているので、それにともなって妊孕性も失わせる処置を取られた可能性は大きいだろうけど、それに関しての示唆はあったのかな…(自分が見逃していただけなら申し訳ない。)

↑の点は結構自分にとっては共感においての減点要素だったかな。フェミニズムが宿っている、とは言えないのも、そのせいかも。結局ベラはマッチョな白人男性的ポジションではないかと言われていたのも、わかる。

でも批判すべき点があるとしても、何故かこの映画には愛おしさがわくのはなんでだろうな、と考えている。

余談だけど、原題POOR THINGSに対して"哀れなるものたち"というタイトルは(原作小説側でつけられたものだろうけど)"物"と"者"のダブルミーニングになれるのがすごく良い。
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