KO

哀れなるものたちのKOのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.9
奇想天外な内容だけど置いていかれることも離脱することもなく楽しみながら観れました。
設定の通り、ベラの成長物語ということなんだと思うけど、どのフェーズに共感するかでその人が大事にしている価値が分かるのかな・・・と思いました。私は船旅の時の老婦人と黒人男性との出会いと会話に心が動いてやっぱり自分は知的好奇心を刺激するという行為に価値を求めてるんだなと思った。。
性的な部分はエマ・ストーンの演技としてはチャレンジだと思うけど、正直退屈。まだ世間に染まっていない子供の脳が快楽を知って求めるあたりはコメディかなと笑えたけど、その後娼婦になってお金を得て社会性を身に着けるって・・・結局そういう提示の仕方でしか表現できないのかなーと萎えた(原作がそういう内容なんだとは思いますが)。もっと新しさが欲しかったな。
一番心を打ったのは、ベラとベラを生み出したゴッド、婚約者のマックスとの関係性。特にマックスが帰ってきたベラを受け入れるところが美しくてちょっと泣けた。家族って最近の映画によく盛り込まれるテーマなのか、この血のつながりがない者同士が家族を作り上げるというのに素直に感動しました。
でもこの映画、単純な成長物語なんだろうかと最後のシーンを見て思いました。成長するということは普通になるということなのだろうか・・・庭で医学書を読みながらみんなと楽しく談笑するベラも凡庸に染まった哀れなるものの一人なのかも・・・なんて思ってしまった。

俳優の演技は素晴らしく、エマ・ストーンは絶賛されるだけあってずっと見た目は大人なのに子供から成熟した女性まで演じ分けていて凄かった。複雑な人物をリアルにしたウィレム・デフォーの演技は言わずもがな、旧価値観の哀れな男性を演じたマーク・ラファロが本当にチャーミングだったなぁ。
そしてアートワークが圧巻でした。衣装も装飾も美しくユニークで、魚眼レンズを多用した丸い世界は独特な感覚。この見せ方にも裏読みをしてしまったな。未知なる世界ではなく実は彼女の内面なのかななんて。
映画館での鑑賞がお勧めです。
KO

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