ロンドンのある天才外科医の元に、
身投げした妊婦の死体が運ばれてきた。
外科医は、彼女の脳死を確認するもほのかに体温があるということで、お腹から赤ちゃんを取り出すと、赤ちゃんの脳を母親に移植し、蘇生させることに成功する。
見た目は成人女性でありながら赤子の知能を持つその子はベラと名付けられ、外科医の屋敷で娘のように育られるが、あくまで実験体である彼女は籠の中の鳥。
ごく自然な知的好奇心に従って世界を知る旅に出かける。
ディズニープリンセス的に外の世界を知る冒険譚なのだが、ディズニーのように魚が喋ってくれるわけでもない。
ベラが触れ合うのは生身の人間たち。
ある日人間の身体的な快楽を知り、
船で出会った2人から他を知り、
学ぶことで知を得ることを知る。
子どもの好奇心の物語でもあるが、
失楽園のように、知を得ることの二面性が描かれる。
知こそ生の原動力であり、知こそが身を汚す。
冒険を続ける中で、
どんなに黒く陰険な世界を目の当たりにしても、ベラはそのことに嫌悪を示さない。
しかし人が嫌がることを好む人間もいる。ということには強い抵抗を示す。
自分の近くに囲い、自分と同じにしたい男たち。
変化を楽しむベラ。
知を得ることそのものに汚れはない。
知を得て、汚れも経験した上で何を選択し行動するか。
いっぱいの経験に溢れて、上がって下がって、それでも世の中を少しでもベターにしようと解剖学書を読むベラの笑顔が素敵だった。
メェーーーー。
ハリーの
人は皆我が船の船長だ。真実で身を守れ。
というセリフがよかった。