フジタジュンコ

哀れなるものたちのフジタジュンコのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.5
映像、美術がとにかく素晴らしい。グロいシーンはしっかりグロく(解剖や手術など)、エンドロールまで最強に美しい。眼福の極み。

設定から『未来のイヴ』を連想したので、ベラを人造人間=機械=あるいはAIとして見ていた。

称賛されるべき作品だということは理解できるのだが、あまりハマれなかった。その理由のひとつに、「神」に支配された覚えのない、日本人の私には「人たろうとするもの」が何に抗っているのか、あまりピンとこないというところがありそうだ。いやもちろん社会的な抑圧もあるし、作中にも登場する女子割礼に象徴される文化的暴力があることも知っているが、我々の生きる社会の規範は神が作ったものではないと私は知っているし、何より、社会通念上ふさわしいふるまいをすることにいちいちストレスを感じていたら現代では生きていけない。

ベラの旅を通して恐ろしいほどのエネルギーで要求されるのが、にっくき「男」あるいは「神」からの、解放、解放、解放。そしてそのメタファーとして執拗に描かれる「女の”性”」。「女」が「人間」になるにはそれしかないのだろうか。キリスト教を信奉する人たちにとってはおそらく胸をつかれるような純粋な「問い」がベラ自身なのであろうが、シンパシーは感じづらい。さらにベラは最後には社会主義者になっている。皮肉だ。

原作はメタ的構造で映画と異なるアプローチをしているようなので、読んでみたいと思う。