木蘭

哀れなるものたちの木蘭のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.3
 フェミニズム風味の油で揚げなおした『フランケンシュタイン』。
 スチームパンクな欧州を、往年のユニバーサル映画の「フランケンシュタインの花嫁」みたいな人造人間ベラが漫遊しつつ、自立した女性になる話...

なんだが、自分の身体と生き方を自己決定するというフェミニズムの考えを記号的に描いているだけで内容は浅いし、本当にフェミニズム的かは怪しい。

 例えば、ヒロインがSEXを認識している世界はカラーで、そうでない世界はモノクロで視覚的に描かれるのに・・・獣の様に性欲に溺れているけど、性欲よりも刺激的な教養を身につけると淑女になる・・・という展開は、禁欲的なヴィクトリア朝的(あっちは女性の性欲の存在を認めないのだが)というかプロテスタント的だったりする。
 言い訳程度に妊娠や性病に触れてはいるものの、娼婦を自立した女性のアイコンの様に描いているのも稚拙・・・というか逆に、彼女らの境遇を馬鹿にしているのか?
 あんだけフェミニズム的なアイコンを列記しておきながら、家父長制度の局地みたいな形式のセレモニーを挙げようとしたり・・・。

 致命的なのは(少なくとも大人の男の目から見たら)ヒロインが全く魅力的じゃ無い。
 鶏ガラみたいな身体はセックスアピールに乏しいし・・・というのは、僕の好みの問題だけど・・・自意識ばかり高くて脳味噌は子供って地獄かよ。途中、見ていて辛かった・・・。
 そんな幼稚なヒロインに夢中になるわけだから、(性的な視線を送らない一部のキャラクターをのぞいて)出てくる男はバカばっか。

 バカな男にしか囲まれていないし、同性は友愛で結ばれているだけなので、ヒロインは恋をしない。SEX(含む同性愛行為)の喜びを知っていても、恋の痛みを知らない・・・つまり子供のママ。
 お互いに自立した存在だからこそ、自己決定出来ないのが他人の心だと知る大人への第一歩が恋の痛みなのだから、ベラは結局大人にはなれない悲しい話なのだ。

 そもそも大人の身体に胎児の脳を移植した事になっているけど、本当なのか観ていて怪しくて、単に記憶をリセットしただけなのでは無いだろうか。2体目の人造人間と比較すると明確なのだが。
 単に監督とエマ・ストーンの演技プランがヘタクソなのかも知れないが。

 特筆すべき事があるとすると、女性器にボカシが入らない事かな。
 「男性器ではあるけど、女性器が写るのは初めて観た。」と、他の客もビックリしていた。
 良い事だ。大人になろう。日本も。
木蘭

木蘭