かに

哀れなるものたちのかにのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
一見妙な映画なんだけど、よく見るとかなり整理されているなと思った。ベラも「実験」のために生み出され育てられたけれど、この映画もまさに「実験」なのかもしれない。経験値も考え方もリセットされた成人女性は一定の条件下でどう生きていくのか。それを一定の条件の元で映画にしたらどうなるのか。そしてそれを見た人間は何を考えるのか。だから外側こそ凝りに凝っているけれどストーリーラインは一般的なエンタメSF/ファンタジー映画だし、メッセージは結構シンプルな感じがした。
結果的に、もっと深くて新しい内容を期待してた人が拍子抜けするのも仕方ないような気がする。「こんなん知ってるよ」っていう、哀れな人や哀れな社会。確かにわたしも「未体験の驚き」(公式サイトから引用)は感じなかった。でも、人間って哀れな生き物だよね〜というのを見せつつ、「フェミニズムは女性のためのものだけでなく人間全体のためのもの」とはっきり提示している気がして、新たな発見はなくても良いものを見たなという気持ち。いや色々と気になる点はあるし余りにも(作り手に)都合が良すぎる設定ばかりだなとは思うけれど、そこもまたこの作品が「実験」だとすれば納得がいく。
原作があるというのを劇場で知ったけど、奇抜なビジュアルを抜いて文章のみで味わうこの物語はまた印象が変わりそうだなと思った。今度読む。

とにかくフォントが印象的、なんならオリジナルにとことん寄せた日本語版のフォントがマジで天才すぎるな、と思っていたのだけど、自分の感想を見返したら「女王陛下のお気に入り」のときもフォントの話をしていた。ランティモス、フォントに一家言ある人なのかな。
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