金の山

哀れなるものたちの金の山のネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

『モンスターはどっち?』

ベラ:エマ・ストーン
ゴッド:ウィレム・デフォー
ウェダバーン:マーク・ラファロ

ギリシャの監督ヨルゴス・ランティモスによるSF作品。原題は「Poor Things」。エマ・ストーンは『ラ・ラ・ランド』以来だったが、相変わらずの美しさ。

「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんて おこがましいとは思わんかね…」
天才外科医・ブラックジャックの師・本間先生の言葉であるが…この映画は、そんな彼とは正反対の思想の天才外科医・ゴッドが登場する。

映像はモノクロで描かれる。これは胎児の知能から始まった女性の「無知(無垢)」を表現しているのだろう。投身を図ったものの、マッドサイエンティスト・ゴッドによって復活を遂げたベラは、さながら猛獣であった。理性がなく、社会通念を理解しない。危険なので、屋敷にかくまわれていた。
ベラの成長は猛スピードで進む。性獣となったベラは、反抗期も同時に迎え、からに監視(研究)を進めるため計画された監禁にも近い結婚を前に、「冒険心」が芽生える。ここから彼女の見える世界がカラフルに色付く。
放蕩者の富豪に世界を連れ回され、底無しの性欲を満たす喜びも束の間、その美貌と理性のなさから、男女関係に軋轢を生み、高次の「不満」を覚える。退屈な大人の世界もそこそこに、ある老女と皮肉屋の黒人に出会い価値観が大人びてゆく。理性を得始めたベラは、自分の残酷さに嫌気がさし始めていたが、世界はそれ以上に残酷だという事実を知り号泣する。「絶望」に近い感情を覚えた。悲しさに溢れた彼女は勢いで富豪の金を全額寄付し、一文無しになる。
ベラは「(この糞みたいな)世界を変える」という目標を見つける。体を差し出すことに抵抗の無かった彼女は、娼婦になり日銭を稼ぐ。そしてさらに知らない世界を知ろうとする。たくさん学ぶこともあったが、体を売った後に残ったのは「空虚」だった。優しくしてくれた店のママも、良心に訴え、飴と鞭で人を利用する人間だった。
父(科学者・ゴッド)の重篤を聞き、ベラは冒険を終え帰国する。そして「愛」を確認し、結婚をする。だが…自分の真実を知り、ゴッドらも「モンスター」に見えた。しかし死を控えた父を前に、彼女は「許し」、冒険で感じていた「寂しさ」が満たされることのほうに喜びを見いだしていた。
その後、さらに自らの真実を知ることになり、ベラの「冒険」はいったん幕を閉じる。

「人のために生きる」ことに執心するのだろう。

哀れなるものたちよ。
いったいどうして、彼らをモンスターだと言えようか?
金の山

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