魔導ネコ

哀れなるものたちの魔導ネコのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
久々の映画館視聴。公開終了目前のギリギリセーフだった。


身投げした成人女性の頭に、その胎児の脳を移植した事で生み出された主人公ベラが、世界を巡りながら1人の人間として成長していく物語。

まず驚くべきポイントは主演女優エマ・ストーンのその演技である。表情1つ、所作1つ、そのほんの一瞬レベルの切り取りだけで精神年齢が幼児なのか成人なのか一目瞭然となる表現力だった。物語序盤では脳移植後のベラしか写し出されず、移植前の姿は後ろ姿のみであったが、中盤で身投げする際の凛々しい生前の表情が映し出された際、あまりの印象の対比に衝撃を受けた。

物語序盤ではモノクロの世界で閉塞的なベラの日常を表現するのに対し、中盤以降、世界に飛び出してからは、スクリーンはあまりにもビビッドな情景を伴って描き出される。現実と幻想の境目たるような幻想的なその情景は一枚絵としての満足感さえ得られるようなものである。


随所随所では「フランケンシュタイン」や「アルジャーノンに花束を」を想起させるようなシーンあり。

ベラが学習していく順序が、単純な欲求の満足→性的快感→知的好奇心→世界の不条理→ジェンダーとしての価値観や性的快楽の搾取の一面→医学、というチグハグなのが面白い。
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