荒野のジャバザハット

哀れなるものたちの荒野のジャバザハットのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.8
手塚治虫の漫画みたいな映画だったな。
人生讃歌。

生まれたばかりのよちよち歩きから見ている1人の少女が性を覚え思春期を迎え、そして親元を離れ世界の残酷さを知り様々な人との出会いにより自己を確立していく。観客全員がベラを父親の様な目で見守る事でウィレムデフォー演じるマッドサイエンティストへの感情移入を強制的にさせられるという。。。あいつ全然良いやつちゃうのに!泣く!

箱庭に閉じ込められる運命にある彼女は本当にアイデンティティを見つけることができたのだろうかという意地悪な疑問を残す作りではあるが、生まれ変わった彼女が成長し今の立ち位置にいる事には変わりない。そんな姿に父親となってしまった観客に否定する事は出来ないなんともズルい半強制的なハートウォーミングムービーに仕上がっていた。

過去作はもっとエッジの効いた受け付け難い歪さを纏った映画を作る人という印象だったが前作の女王陛下のお気に入りによって少し大衆受けするバランスを身につけたのだろうか、今作はかなり分かりやすく飲み込みやすい笑いに溢れた映画でとても見やすい作品になっていた。
画面構成がとても綺麗で元々絵作りに定評のある監督だが今作はファンタジー要素が強めの為いつも以上に世界観と構成がマッチした印象。途中挟まれる章立ての絵がとても良かった。