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哀れなるものたちのmegurosのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

フランケンシュタイン博士をモデルにしているだろう天才外科医ゴドウィン・バクスター(見た目はフランケンシュタインの”怪物”)は、身投げした妊娠女性にお腹の子の脳を移植して女性を蘇生、ベラを生み出す。ゴドウィンは”ゴッド”の愛称で呼ばれるが、子供にとって親とは創造主=神であるということも含意されているのだろう。

「フランケンシュタイン」の作者メアリー・シェリー(SFの先駆者/創始者)の父親は無神論者でアナキズムの先駆者でもあるウィリアム・ゴドウィン。メアリー・シェリーが恋愛を父親に反対され駆け落ちしている経緯も踏まえると、本作はベラ=メアリー・シェリーが父権的な or 男性的な支配に抗い、自己決定を貫く話と見ることができる。

加えて、メアリー・シェリーの母親メアリー・ウルストンクラフトはフェミニズムの創始者でもあることまで踏まえると、争う対象は父親だけではない。ベラは子供の脳を移植されているため、映画ではベラが徐々に成人女性の思考を獲得していく過程が描かれる。この設定は、女性が人生の過程で往々にして出会うことになる男性社会が押し付けてくる”女性の社会的イメージ”との戦いを、凝縮して見せる装置として機能していた。

後半興味深かったのは、身投げした女性ヴィクトリアの元旦那である軍人アルフィーとの関係性だ。アルフィーはサディスティックなDB男で最悪な輩だが、ベラにとっては父親でもある。この二重性はアルフィーとゴドウィンとの対比構造ともなるわけで、だからこそゴドウィンの死を前にベラが語る愛憎、さらにはアルフィーがヤギとして庭に残るラストには、毒親の境界線さえ感じられて趣深い。※また、ベラのアルフィーへの仕打ちは、育ての親=ゴドウィンとそっくりなアプローチであるとも考えられないか。

遊び人ダンカンを演じたマーク・ラファロには笑えたが、これで助演男優賞ノミネートとは。アカデミー主演女優賞受賞のエマ・ストーンは身体をはっていたなという印象。マーガレット・クアリーがどんどん母上に似てきて美しかったです。
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