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哀れなるものたちのyahのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5
 楽しみにしてた話題作!公開始まってすぐ観に行っていたが、レビュー遅くなってしまった。ヨルゴス・ランティモス監督の撮る作品がどんどん凄みを帯びている!!『女王陛下のお気に入り』もすごく好きで、あの映画を見終わった後の余韻もすごかったけど、今回はエゲツナイ。
『女王陛下の〜』でのエマ・ストーンの演技を観ていたら、この役に最適であることは言うまでもないが、公開前から注目されるこの演技は納得のもの。
 全てをスポンジのように吸収していく"ベラ・バクスター"を演じるには相当のエネルギーがいると思われるが、エマ・ストーンは恐れず見事に演じ切っているのが素晴らしい。今年のオスカーは彼女以外は考えられなかった。

 またベラを取り巻く男衆も、キャラクターが出来上がっている。ベラを作り上げたウォレム・デフォー演じる天才外科医は父親的な観点でベラを見守り、ベラの成長を記録するマックスは倫理的にベラを捉えて、愛するようになる。またマーク・ラファロ扮する遊び人の弁護士は愛人的な感覚であり、三者三様。

 ベラは物事を覚え急速に成長していくが、3大欲求のままに生きる。しかしベラは旅で、彼女の考えを一変するような人々と出会い、一辺倒の考えではなく、世の中の不思議や不条理をフラットな視点で捉えるところが、このキャラクターの面白いところである。感情をコントロールできないベラは貧困で餓死していく乳児をみてショックを受け、成長過程の途中である彼女は、そのショックの表現を攻撃的な方法で表現する。しかしその後ベラは娼婦として世間を見つめ、彼女なりに何が必要かと考え成長していく様は、登場人物の誰よりもスマートに映る。

 カメラワークや、モノクロームからカラーに映像が切り替わったり、独創的で個性的な映像で目を楽しませてくれる。また衣装もベラの成長過程に応じて変化しており、ゴシックやクラシカルなドレスたちは素晴らしかった。
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